マーケティングの時間減衰モデル
リードスコアリングやアトリビューション分析で使われる時間減衰モデルについて、代表的な数式と主要ツールの実装例を整理します。
リードスコアリング、アトリビューション分析、レコメンデーションシステムで活用される時間減衰モデルについて、最近学ぶ機会があったので備忘録代わりにまとめてみました。数式を含む技術的内容ですが、実装を検討されている方の参考になれば幸いです。
時間減衰モデルとは?
時間減衰モデル(Time Decay Model)とは、行動発生から経過した時間に応じて、その行動の重み付けを逓減させる手法です。例えば同一の資料ダウンロード行動であっても、1日前の行動は高く評価し、90日前の行動は低く評価します。
「顧客の関心度は時間経過とともに減衰する」「直近の接点ほど次のアクションに結びつきやすい」という経験則は、営業・マーケティング実務では広く認識されています。時間減衰モデルを導入することで、この経験則を定量的かつ再現可能な形で実装できます。
代表的な時間減衰モデル
結論として、迷ったら指数減衰を選択するのがよいでしょう。営業オペレーションのルールを組み込んでカスタマイズしたい場合は、区分減衰(指数減衰+フラット)が適していると考えます。
指数減衰
各イベント発生が現在からt日前である場合の重み:
スコアリングは重み付き合計:
パラメータは、半減期で直感的に指定します。
- 半減期によるパラメータ指定が直感的なので、ビジネスの会話に落とし込みやすい。
- 確率過程の理論と整合する。(Poisson過程では「一定レートでイベントが起きる」と仮定する区間では、到着間隔は指数分布になる)
- 時系列の基本手法であり、多くの主要サービスで採用されている。(後述)
※幾何減衰というモデルも存在しますが、等間隔の離散時間で使うなら指数減衰とほぼ同義なので省略しました。
フラット
- 「直近日のみ考慮する」など、営業オペレーションのルールを数式化しやすい。
- 直近日以前のデータをアーカイブすることができるなど、データストレージへの負担を軽減できる。
区分的減衰(フラット+指数減衰)
- 「直近日は満額、それ以降は指数で落とす」など、営業オペレーションのルールを数式化しやすい。
- データストレージ軽減のために0区間を設けるのもあり。
パワー減衰
ただし、
:減衰の急さ(テールの重さ)
:時間スケール
- パラメータを調整することで指数よりゆっくり減衰させることができる。
- 人の記憶などの研究分野では指数減衰と並ぶ検討対象となっている。
図:半減期14日
指数減衰とパワー減衰の比較
主要ツールでの実装・既定値
Google Analytics
以前のユニバーサルアナリティクス(UA)時代のアトリビューションモデルでは、「減衰」を選択でき、半減期7日を既定値とした指数減衰が採用されていました。
ただし、GA4になってからは減衰モデルは廃止され、タッチポイント貢献度の計算は機械学習アルゴリズムがデフォルトになっています。
参考:[UA] About the default MCF attribution models [Legacy] - Analytics Help
HubSpot
アトリビューションモデルにおいて、半減期7日を既定値とした指数減衰が採用されています。
※表記は「Time decay: 7-day half-life」、つまり、ですが、これはを仮定すれば指数減衰と同義です。
参考:Understand attribution reporting
Adobe Analytics
アトリビューションモデルの「Time Decay」で指数減衰が採用されています。半減期7日が既定値でカスタマイズ設定が可能なようです。
参考:Attribution Components | Adobe Analytics
Salesforce
Account Engagement (旧 Pardot) のスコアリングには、スコア減衰はなく、ワークフローでの自前設計(一定期間非アクティブなら減点、等)として実装する必要があるようです。公式/専門メディアでも“手動設計が必要”とされています。
AI機能(Einstein リードスコアリングなど)がAIモデルが内部的に時間経過の概念を扱っている可能性はありますが、明示的な減衰ルールはありませんでした。